不妊治療
不妊症の主な原因
不妊症は、なんらかの積極的な治療をしないと、自然に妊娠する可能性が低い状態を意味しています。妊娠が上手くいかない原因は多岐にわたりますが、大きく分けると、女性に主な原因があるケースと男性にあるケースに分類できます。その割合は、女性不妊が40~50%、男性不妊が30~40%、残りの約10%は男女両方に原因が潜んでいるケースです。不妊症の原因について「女性側にある」と考えている方もいらっしゃいますが、実際には男性に原因があるケースも少なくないのです。
- 女性側の原因
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- ホルモン分泌異常などにより、排卵が見られない
- 黄体の機能が弱い
- 卵管が狭い、詰まっている
- 子宮の形状異常
- 頸管粘液が少ない
- 子宮筋腫や子宮腺筋症がある
- 子宮内膜の状態が悪い
など
- 男性側の原因
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- 精子を造る機能に障害がある
- 精子の活動性が弱い
- 精路が閉鎖している
- 射精が上手くいっていない
- 内分泌ホルモンに異常が見られる
など
不妊検査
不妊症の治療に入るときは、何が妊娠の妨げになっているのかを調べる必要があります。検査は月経周期に合わせて行い、不妊症の原因が推定できれば、それに対応して治療方針を立てることが可能です。具体的には、月経中のホルモン検査、フーナーテスト、黄体ホルモン検査、精液検査などを行ないます。
このうち月経中のホルモン検査では、ホルモンバランスの異常や卵巣の予備能などを知ることが出来ます。フーナーテストは、排卵直前の夜に夫婦生活をして翌日の朝受診していただき、頸管粘液中に運動している精子がいるかどうかを調べます。また、精液検査は男性不妊症の診断において最も基本となる検査であり、精液の量と数、運動率などを把握することが出来ます。
当クリニックでは問診、治療歴などから必要最低限の検査のみご提案します。
不妊治療法、流れ
不妊症の治療法は、不妊の原因によってその内容も変わってきますが、まずはタイミング法を行っていきます。これは、基礎体温表や超音波検査で排卵日を予測して、排卵予測日に夫婦生活を持つことによって妊娠を目指す治療法です。不妊治療と言うと、人工授精や体外受精などの高度な方法を思い浮かべがちですが、実はタイミング法が最も多く行われているのです。タイミング法は、フーナーテストが良好で不妊症検査で明らかな原因が認められない場合に行います。
まず第一段階として超音波検査で卵胞の大きさを計測し、排卵日を予測します。目安としては、月経が28~30日周期の場合、月経開始後12~14日頃になります。その上で、排卵予測日に性交をします。予定月経日になっても月経が訪れず、さらに7~10日過ぎるようであれば、妊娠反応が無いかどうかを確認します。惜しくも月経が来てしまった場合は、再度タイミングをみていくことになります。おおむね3周期から5周期程度繰り返しても妊娠に至らない場合高度生殖医療へのステップアップをお勧めします。
人工授精
人工授精は、洗浄した精子を子宮の中に送り込む治療法です。タイミング法との相違点は、精子が腟に入るか、子宮に入るかというところです。精子が女性の体内に進入するプロセスは通常の性行為とは異なりますが、その後の受精と着床については自然な経過で妊娠が成立することを期待します。当院ではフーナーテストが不良の場合にご提案しております。通院の流れなどは基本的にタイミング法と同様です。排卵予測日にクリニックにて洗浄した精子を専用のカテーテルを使って子宮内に直接注入します。人工授精実施後もタイミング法と同様の流れになります。
生殖補助医療
生殖補助医療は、タイミング法や排卵誘発などの一般的な不妊治療が上手くいかなかったときに行われます。具体的には体外受精、顕微授精、胚移植などがあるので、それぞれの特長をご説明し、納得いただいてから治療を進めていきます。
体外受精(IVF)
体外受精(IVF)は、培養器の中で受精を目指す生殖補助医療です。排卵近くまで発育した卵子を体外に取り出し、精子と接触させます。この受精卵を再び子宮内に戻すことにより、妊娠が期待できます。なお、体外受精の実施にあたっては、「両方の卵管が閉塞している」、「積極的な不妊治療を行っても十分な効果が得られなかった」など一定の要件がありますので、実施の前に十分な問診や説明を行いご納得の上で治療を進めていきます。
顕微授精
体外受精で受精に至らない場合、顕微授精を行うこともあります。注入用の針を使用し、顕微鏡下で精子を卵子の細胞質内に直接注入します。重度の精子減少症や乏精子症などの場合には、この方法が選択されます。
胚移植(ET)
胚移植は、子宮内に細いチューブを挿入し、胚を子宮内に移植する方法です。新鮮胚移植と凍結融解胚移植があり、前者の場合は採卵後に受精させた胚を同じ周期(採卵から数日後)に移植します。これに対し、後者の場合は胚を一旦凍結保存させ、次の周期以降に融解した胚を移植します。当クリニックでは、いずれの方法も行っておりますが、患者様の状態に応じて最適な方法を選択します。