培養室より タイムラプス培養のメリット 

 現在、先進医療としてタイムラプス培養を実施しています。
タイムラプス培養では培養器の中で胚の画像を撮影し続けているため、主に以下のようなメリットがあります。

「胚を観察するため培養器の外に出す」ということがありません。胚が培養器の外に出されると、光や酸素濃度の違いなどによるストレスを少なからず受けてしまいますが、培養器の中にずっと胚を入れておけるタイムラプス培養では、安定した環境で培養を続けることができます。

・正常に受精したかを判定するために「前核」の数を確認します(2個が正常受精、それ以外は異常受精)が、観察のタイミングによっては前核が消えてしまい、見逃してしまうことがありました。

 タイムラプス培養では画像を撮り続けているため、前核を見逃すことなく確実な受精判定ができます。

 これらのメリットに加えて、タイムラプス培養では胚の動きを動画として見ることができるため、通常の培養・観察ではわからなかった「不規則な分割」を観察することができます。

 細胞は通常、1個が2個に分割しますが、タイムラプスで観察を行うと「1個が3個以上に分割している」ことがときどきあります(ダイレクトクリベージと呼ばれます)。この分割が起きた胚は胚盤胞まで育ちにくくなりますが、もし良好な胚盤胞まで育てば十分な妊娠率があることが報告されています。

 そのため、ダイレクトクリベージが起きた胚は初期胚凍結を行うよりも、胚盤胞まで培養して、育ったら凍結するのがよいと考えています。

 当クリニックでは初期胚のグレード付けにもダイレクトクリベージの評価を取り入れ、より正確な胚評価を行っています。